黒川道祐の「日次紀事(にちじきじ)」と五山送り火・大文字
黒川道祐の「日次紀事」と五山送り火・大文字
五山送り火は古くから行われていると言われているが、起源は明確ではありません。黒川道祐が江戸時代中期の1676年(延宝4年)に刊行した「日次紀事」には大文字の字は相国寺79世・横川景三または真言宗の宗祖である弘法大師・空海のものと記されています。
【五山送り火2025 日程】
五山送り火2025は2025年(令和7年)8月16日(土曜日)20:00から5分間隔で順次点火されます。なお五山送り火は原則雨天決行だが、気象条件によって点火時間が変更になる場合もあります。
五山送り火2025
【五山送り火 歴史・簡単概要】
五山送り火(ござんのおくりび)はお盆(おぼん・盂蘭盆(うらぼん))にあの世(冥府(めいふ))から帰ってきたお精霊さん(おしょらいさん)をあの世に送り返す仏教的行事です。五山送り火は宗教・歴史的な背景から「大文字の送り火」とも言われることがあります。五山送り火はいつ始まったかは明確ではありません。一説には多くの灯明を灯して仏神を供養する万灯会(まんどうえ)が山の山腹で行われるようになり、お盆の精霊の送り火(門火(かどび))になったとも言われています。
【黒川道祐(くろかわどうゆう)の「日次紀事(にちじきじ)」】
五山送り火は古くから行われていると言われているが、起源は明確ではありません。江戸時代(1603年~1868年)以降は文献に多く記されるようになりました。江戸時代前期の儒医(じゅい)・歴史家である黒川道祐が1676年(延宝4年)に刊行した「日次紀事」には「今夜東山浄土寺山上薪をもって大の字を點ず、此の字畫凡筆の及ぶところに非ず也、伝え言、室町家繁栄の日、遠望のためにこれを點ぜしむ、ゆえに、一條通を當面とし、これによって相国寺横川景三の筆するところという也、また弘法大師の畫するところという也、斯節是に近し、凡そ此月六日より薪木を伐りて、點火に至る、其の事に預かる者数十家あり、今日申の刻、伐り乾すところの薪木を擔ひ、互に火を携へ山上に登る、」と記され、大文字の文字は相国寺(しょうこくじ)79世・横川景三(おうせんけいさん)の筆とも、または真言宗(しんごんしゅう)の宗祖である弘法大師(こうぼうだいし)・空海(くうかい)の筆ともとしています。ちなみに横川景三は大文字の麓にある銀閣寺を造営した室町幕府8代将軍・足利義政(あしかがよしまさ)の相談相手で、銀閣寺は相国寺を本山としました。例年7月16日に行われている大文字(五山送り火)では7月6日に薪を伐って乾かし、7月16日の申の刻に薪を担い、火を持って山に登って大文字を灯すことも記されています。なお「日次紀事」には大文字だけでなく、妙法・船形も記され、所々の山々や原野に人が集まって、お盆に用意した破子・公卿台なども焼くことも記されています。お盆の行事も時代とともに変遷しているようです。
●「日次紀事」は1676年(延宝4年)に医者・歴史家である黒川道祐が記しました。「日次紀事」は1月から日を追って、節序・神事・公事・人事・忌日・法会・開帳などの項目を設け、行事の由来・現況などを解説しています。民間の習俗行事が多く収録されています。なお神事・儀式は非公開が前提とされていることから出版直後に絶板処分を受けました。
●黒川道祐は江戸時代前期の1623年(元和9年)に広島藩藩主・浅野光晟(あさのみつあきら)の典医(てんい)である儒医(じゅい)・黒川光信(くろかわみつのぶ・黒川寿閑)と堀杏庵(ほりきょうあん)の娘との間に安芸国(広島)で生れました。黒川道祐は玄逸・静庵・遠碧軒などと称しました。父・黒川光信に医学を学び、儒学者・林羅山(はやしらざん)とその子・林鵞峰(はやしがほう)に儒学を学びました。また母方の祖父・堀杏庵にも学びました。黒川家を嗣いで父・黒川光信と同じく、広島藩藩主・浅野家に家禄400石の儒医として仕えました。医師・武田信成(たけだのぶなり)の娘と結婚し、長男・武田信郷(たけだのぶさと)が生れました。その後1673年(延宝元年)に典医を辞して京都洛中に住し、著述に専念しました。本草家・貝原益軒(かいばらえっけん)らと交友し、近畿一円を旅しました。黒川道祐は医学史書「本朝医考(ほんちょういこう)」・山城国の地誌「雍州府志(ようしゅうふし)」・年中行事「日次紀事(にちじきじ)」などを記しました。また「芸備国郡志(あきこくぐんし)」・「遠碧軒随筆(えんへきけんずいひつ)」・「近畿游覧誌稿(きんきゆうらんしこう)」なども記しました。黒川道祐は独自の史観により、地誌・医学史に功績を残しました。なお黒川道祐は1691年(元禄4年)12月23日に亡くなりました。京都市上京区智恵光院通五辻上ルの本隆寺(ほんりゅうじ)に墓碑があります。
【黒川道祐の「日次紀事」と五山送り火・大文字 備考】
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五山送り火スポット